竜騎士の道
その白い髪と豊かな髭を持つ老人は言った。
「そなたも愚かな判断をしたものだ。」
身体を覆い尽くす青いローブから覗くやせ細った手。それは彼の命の残り火が決して長く燃え続けるものではないことを雄弁に物語っている。
「確かに、時代の流れから見れば俺は愚かだったかもしれない。」
かつて愛しい妹たちと幸多き母国の将来について語り合ったことさえも打ち寄せる時間の波にさらわれて忘れかけていた。兄は妹たちよりも先に大人になる。彼の国がどのような版図の中に置かれているのかを兄妹の中で最初に知っていたのも、そして誰よりもその母国に誇りを持っていたのも彼である。
「ミネルバもマリアもそなたを愛し、慕っていた・・・・。」
天駆ける騎士を統べる国マケドニア。この国のほとんどの地域は起伏に富んだ地形によって良質な飛竜や天馬の産地として知られているが、それはまた、農業には全くといっていいほど適していないという言葉の裏返しでもあった。そして、不幸なことにその質素な生活ゆえアカネイアの民からは田舎者といわれのない迫害や差別を受けることもしばしばあった。マケドニアは決して豊かな国でも歴史のある国でもなかったが、その土地柄、彼らは飛竜や天馬を操ることに長けていた。代々の国王も飛竜を操る竜騎士であったこともあって、その国力とは裏腹に強力な騎士団を抱える軍事国家としての側面も持っていた。
「そして、そなたも妹たちを愛していたはず。」
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