竜騎士の道
急激に力をつけ始めたドルーアと対等の立場で交渉するには、力のある国王が必要だった。ドルーアの力が膨れ上がらないうちにマケドニアは自らの行く末を決めなければならない。国を守るためには病に伏せている父王すらミシェイルにとって邪魔な存在でしかなかった。自分が国王になれば国は守り切れる、彼には自信があったのだ。
長い病との戦いの末、父は帰らぬ人となった。
国中の人間がそう信じたに違いない。そのくらい巧妙な暗殺。しかし、その死に疑問を抱く人物がいた。
「兄上・・・・もしや・・・・?」
それがミネルバだった。口には出していないが、恐らくマリアも父親の死の不自然さに気付いていただろう。今思えば、父の死を受け入れることのできない肉親としての心が、その死の真相を知る鍵になっていたのかもしれない。当然ミネルバはミシェイルにその真意を問うた。兄上は正気をなくしているのではないかとまで疑われた。心を失っての行為であったほうが彼女にとっては幸せだっただろうが、残念ながらこれは確固とした意志の元での行為であった。
「そのようなやり方には従えない!」
それが、今まで愛していた妹の離反の始まり。父を失い、その父を奪い国王となる兄。彼女は新しいマケドニアに未練を抱くことはなかった。しかし、彼女は憎むべき兄から離れることはできなかった。彼女を奮い立たせたのが肉親であったならば、彼女を祖国に縛り付けたのもまた、肉親であるマリアの存在。軍隊を率いることのできないマリアは戦火を避けるという大義のもとドルーアの領地に連れ去られていた。
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